2008年8月18日月曜日

2008/8/9-15 ハワイ

ハワイに行かない?と誘われ、二つ返事でOKした。

学生時代の先輩がハワイに留学しているため、そこに遊びに行こうという話だ。OKしたまでは良かったが、「そういえば俺ハワイ行って何すんだ?」と考え込んでしまった。ハワイに在住する先輩を含めて私以外の方は全員ゴルフプレイヤーだ。聞けば「エブリディゴルフ」だそうだ。私はゴルフはできない。

せっかく休みを取ってまでハワイに行って、ずーっとビーチでゴロゴロしているのも馬鹿らしい。何か遊べることはないかとネット等でいろいろ探しても、なかなか1人で楽しめそうな遊びが見つからない。先輩の1人から頂いたゴルフクラブのセットはあるので、思い切ってこの際ゴルフを始めてみるかとも考えたが、なかなか最初の一歩が踏み出せない。どうしようかなと、時間がある時にハワイ関連のサイトを探すでもなく眺めたりしていたが、ある日「Fly fishing in Hawaii - Bonefish」というサイトを見つけた。Bonefishって、まさかあのフラット(浅瀬)のゴースト、ボーンフィッシュのことか・・・

私は今から8年ほど前にフライフィッシングを始めた。通常の釣りは魚を釣る楽しみのみであるのに対して、フライフィッシングは、魚の食性を考えてフライを巻く楽しみ、フライキャスティングという特殊なキャストを極める楽しみ、そして魚を釣る楽しみがあるという点が気に入り、河川の上流部を遡りながらイワナやヤマメを釣り上がるというスタイルで遊んでいた。

ちょうどその頃Distant Watersという世界中のフライフィッシングフィールドを美しい写真と物語調の文章で綴る洋書を購入した。この本が大変良い本で、当時私はこの本の各章に綴られた内容に夢中になり、死ぬまでにこの本に書かれている全ての場所に一度は訪れて釣りをしたいと考えていた。

アラスカ、フロリダ、イングランド、ノルウェイ、アルゼンチン、ロッキー山脈、カナダ、ニュージーランド、ロシア、メキシコ、アイスランド・・全ての章が美しく、写真を眺めているだけで楽しかったが、私が特に心を打たれたのが「Jingle Bones」という章で、クリスマス島というマレーシアの南に位置する島でボーンフィッシュという魚を釣る話の章だった。

フライフィッシングは基本的には淡水で行うモノだと考えていたが、その章には信じられないほど美しいエメラルドグリーンに輝く砂浜の浅瀬で、ボーンフィッシュという世界で最も早く泳ぎ、非常に臆病な魚をフライで釣る話が描かれていた。そこではボーンフィッシュはその臆病さから通常の人の目にとまることがほとんどないため、フラット(浅瀬)のゴーストと呼ばれていた。また、一度フックすると信じられないパワーとスピードで、一瞬で100メートルくらい走るという。私はこの章の内容が本当に好きになった。こんな美しい場所で、そんなファイターを相手に一日中釣りを楽しめたら最高だなと何度も読み返した。

そうして想像力だけを膨らませていたが、しばらくすると仕事も忙しくなり、釣りにも行けなくなり、その本を開くこともなくなっていた。

そして今。本当に久しぶりにBonefishという単語を見た。昔購入した本を引っ張り出し、サイトを確認した。ハワイでもボーンフィッシュが釣れるのか・・・と驚いたのと同時に嬉しくなった。あのボーンフィッシュとこんなに早く対峙できるチャンスが訪れるとは思いもよらなかった。

私はさっそくソルトウォーター用のフライ用品を買いそろえ、週末になる度に葉山まで行って、対ボーンフィッシュ用のフィッシングスキルを身につけるべく練習(兼釣り)を重ねた。

ボーンフィッシングは基本的にガイドを雇い、ガイドがボーンフィッシュを見つけ、客に「8時の方向20フィート」などと指示をして、そこからボーンフィッシュが動くと予想される少し離れた場所にフライを投げ込むサイトフィッシングという方法が取られる。ハワイでは、常に太陽が出ているとは限らないのと、クリスマス島程浅瀬が大きくないため、できる限りの遠投を行い、移動しながらエリアを攻めるというブラインドフィッシングという方法も多用されるようだが、いざガイドにキャスト位置を指定されて、そこに投げ込むスキルがなくては釣りにならない。河川の上流部と違い、海では風も強い。正確で力強いフライキャスティングスキルが必要とされる。しばらくフライフィッシングから遠ざかっていた私は、まず昔の勘を取り戻し、尚かつさらにそこからスキルアップを図る必要があった。

葉山での練習は楽しかった。特に夕暮れ時の葉山は非常に美しく、水面に映る夕日とロッドから放たれる美しいループは、時の経つのを忘れさせてくれた。時には魚も釣れ、ハワイに行かなくても楽しいな・・と思わせる程だった。ハワイと葉山って何となく語感が似て・・ないか。写真は練習中に釣れたカマス。釣り上げた瞬間に家に持ち帰って塩焼きにしたくなるほど旨そうだったが、リリースした。

ちなみに、前回のブログから今回のブログまでの週末は、ほぼ全て葉山にいた。練習中は山とは違い、写真を撮るような場所も、撮ってくれるような人もいないため、ブログをさぼってました。

で。葉山での練習も十分。ようやくハワイに出発する日が来た。頭の中はボーンフィッシュで一杯だ。現地でのガイドも予約済み。羽田発のチャーター便に乗り込み7時間ほどでハワイに到着した。寝ていたらあっという間に着いた。現地時間AM11:30。外に出ると綺麗に晴れている。雰囲気は沖縄似ていて、外国に来たという感じはあまりしない。

ワイキキビーチのど真ん中のホテルに着き、荷物を整理し、とりあえずワイキキビーチに行って海水浴をすることにした。ワイキキビーチは想像していた程混雑もなく、景色を眺めながら泳いだり寝たりしてのんびりした。写真はダイアモンドヘッドを眺めながら、「どの辺がダイアモンドなんだ?」と考える私。

しばらくのんびりした後、日も落ちてきたので、ワイキキのストリートをぶらぶらしながらホテルまで戻ることにした。ワイキキを少し歩いて分かったのが、ワイキキは沖縄と東京を足して2で割ったような場所だということだ。あちこちから日本語が聞こえてくるし、ブランドショップがこれでもかというほど林立している。何でハワイにまできてヴィトンやらブルガリやらに行きたいのか分からないが、不思議な場所だなあなどと思いながらホテルに戻り、現地に在住する方と合流し、夕食に出かけた。

夜のワイキキもまた人で一杯だった。チャイニーズ系の最近できたというレストランに入り、歓談しながら食べまくった。食事は流石に美味しい。ハワイアンビールと沢山のご馳走で満足した後、ビーチ沿いのオープンテラスのバーに向かい、波の音を聞きながら静かにカクテルを飲むことにした。

月を見ながらカクテルを飲み、昔話や笑い話をし、少し眠くなったのでホテルに帰り、寝た。写真は月明かりに照らされたワイキキビーチを眺めながら、翌日からのボーンフィッシングに思いを馳せる私。

そして翌日。朝4:00に起床し、ホテルのエントランスでガイドが迎えにくるのを待った。このガイド、サイトには「俺はプロだから時間は絶対に厳守する。」と書いていた割には、いきなり30分も遅刻してくれた。軽く苛立ったが、2日間も一緒に過ごす男との関係を、いきなり最初から悪化させてもつまらないだけなので、忘れることにした。写真では見ていたが実際に会うと・・・怖い。元軍人で、元ハワイ州立大学のフットボールチームのコーチ。シアトルで10年以上のスチールヘッドのガイドをした経験から、アメリカ本土ではフライフィッシングガイドとして比較的有名な男なようだ。持っているギアも全て最高の一流品で、しかもそれらは全てスポンサー企業から無料で提供されているという。

本日最初のフィッシングスポットは、元軍人の経歴を生かして、パールハーバーに隣接するHickam Air Force Baseにあるボーンフィッシングに最適な場所にするという。既にもう軍関係者ではないのに、未だに軍の施設に入ることのできるパスを持っているなんてセキュリティ的に問題なんじゃないかと思ったが、私は良い場所で釣りさえ出来れば良いので忘れることにした。因みにHickam Air Force Baseは日本軍の真珠湾攻撃の急降下爆撃の端緒となった基地である。

施設に入ると建物の壁にはまだ銃弾の後が大量に残っている事に気づいた。日本のゼロ戦が真珠湾攻撃の際に浴びせた銃弾だという。写真を撮ろうとしたが、第3次真珠湾攻撃を画策するスパイの1人だと思われたらマズイので止めた。そんな建物の間に立つバーガーキングに立ち寄り、ドライブスルーでモーニングセットを注文し、車中で食べていると、今日のサイトに到着した。

ガイドと釣り必要な事項について話し合い、リーダーを作り、ラインの癖を取り、ガイドのフライを見せてもらった。写真の緑のフライボックスに入っているのが私が日本でせっせと巻きまくったフライ。青いフライボックスに入っているのがガイドのフライ。日本で知られているパターンとは全く違う。「これはなんだ?エビ?カニ?」と聞くと「何かであり、何かではない」と禅問答のような回答が返ってきた。要するに何かに似せて作っているのではなく、なんにでも見えるように作ってあるということだ。ガイドのフライの方が実績があるのだろうから、ガイドのフライを使うことにした。ロッドとリールは日本から#9(Sage Xi2/Tibor Riptide)と#8(TFO TiCr/Vosseler S2)を持ってきているので、#9を使うことにした。ガイドはC. F. Burkheimerの#9ロッドを貸してくれると言ったが、このロッドはカスタムビルドロッドの中でも最高峰に位置するロッドだ。傷でも付けたら嫌なので、自分のを使うことにした。

準備も終わり、水に入ると、さっそくガイドが緊張した声で私に「おい、正面20フィート先を見ろ、ボーンだ。その先25フィートくらいに投げてゆっくり引け。」と言う。はっきり言って心の準備が全くできていなかった私は焦りまくった。ラインも出していない。急いでラインを出して、まるでなっていない訳の分からないキャストをしてようやく投げ、ゆっくりリトリーブした。水深は脛の真ん中くらいしかないが、私にはボーンフィッシュがどこにいるのか全く見えない。ガイドが「ゆっくり、ゆっくり」と言うので、私はできる限りゆっくりフライを動かした。

すると、突然ばしゃっと水面を大きな魚らしきモノがターンするのが見えた。魚が我々の存在に気づき、逃げてしまったようだ。私はいきなりやってきた最初のチャンスの興奮が醒めずにぼけーっとしていたが、ガイドは「残念だ。次に行こう。俺たちの目的地はまだ遠い」と言う。周りを見渡すと遠くでボーンフィッシュがテイリング(ボーンフィッシュが海底のエビやカニをあさっている時に尾鰭が水面から飛び出して見えること)しているのが見えたので、このエリアで続けていれば、チャンスがありそうな気がしたが、ガイドはもっと良い場所があると言う。

渋々ガイドについて行くと、ガイドはどんどん水深の深い場所に歩いていく。まだ早朝なので、水温は比較的冷たい。胸まで水に浸かって歩いていると、前日のモヒートで二日酔い気味だった私は徐々に目が覚めてくるように感じた。ガイドもそれを感じたのか、にやにやしながら「オイ。XXX(私の名前)。グッドモーニング!!」と言った。私は「このヤロウ、グッドモーニングじゃねーよ。もっと浅いトコ連れてけよ。」と内心不満たらたらだったが、こんな体験もアリかなと思い直し、黙ってガイドについて行くことにした。 写真は開き直って笑顔を見せる私。

胸まであるウェーディング(水に浸かって歩いたり釣りをしたりすることをフライフィッシングではウェーディングと言います)を続けていると、突然膝くらいまでの水深の場所にたどり着いた。ここはガイドが知るベストのブラインドフィッシングスポットだという。なんでわざわざブラインドの場所に連れてくるのか分からなかったが、とりあえずここでしばらくやらせるつもりのようだ。

ボーンフィッシュは潮が満ちてくるに従って浅瀬にやってきて、潮が引くのに伴い深場へと帰って行く。今のオアフでは干潮が朝の5:30。満潮が昼の1:00。まだ早朝のため、ガイドはまだ浅瀬にいるボーンフィッシュは少ないと判断したのだろう。

しばらく投げていたが、ガイドが突然私にキャスティングの指導を始めた。ガイドに言わせると私のキャスティングは全くなっていないという。確かに私のキャスティングは完全自己流でせいぜい本を読んで勉強した程度なため、上手く投げられる時とそうでない時があり、また、上手く投げられてもそれがなぜ上手く投げられ、上手く行かない時もなぜ上手く行かないのか正確に把握できないでいた。このあたりからガイドはボーンフィッシングガイドではなく、私のキャスティングのプライベートコーチに変貌した。この後浅瀬に移動してサイトフィッシュにトライしたが、そこでもボーンフィッシュを発見できたのは3回ほど。全てフックできずに、残りの時間はほぼキャスティング練習に費やされた。

ついには「午後昼飯を食い終わったら2時間くらい公園に行ってキャスティング練習をしないか?そのあと別の場所でブラインドで攻めよう」と誘ってきた。ま、ここでキャスティングスキルを改善しておけばこの後のボーンフィッシングにも効果があるだろうと、ガイドの誘いに同意することにした。

昼飯はTaco Del Marというブリトーとタコスの店に行くことになった。日本でブリトーと言うと、クレープ生地にハムやらチーズやらミートソースが入った手のひらサイズの食べやすい食べ物を想像するが、ここのブリトーは全く別物で、ライスまで入った巨大なジャンクフードだった。味も・・・。全く感激がなかった(むしろ失望した)ため写真も撮りませんでした。

この後、約束通り公園に向かった。ものすごい広い公園に人は誰もいない。日本にもこんな公園があれば、葉山に行かなくても練習できるなあ、などと考えていると早速練習が始まった。ガイドのキャストは完璧で、飛距離もかなり出ている。私も彼の言うことにその都度納得し、彼の指摘される点を修正した結果、かなりキャスティングスキルが改善したように思う。少なくともどうやったらソルトウォーター向けのキャストになるかというメカニズムの点については完全に理解した。

一通りのレッスンが終わり、釣りに戻る事になった。戻る前に、ガイドの家に立ち寄り、ガイドが使っているバイス(フライを巻く際に釣り針を挟んで固定させる道具)などを見せてもらったり、ガイドの息子を紹介してもらったりした。ガイドは恐ろしい顔をしているが息子は可愛い。息子に私の帽子をかぶせてやると喜んで走り回っていた。

しばらくガイドの家で過ごした後、釣り場に移動した。次の場所はオアフ島の東側にある、とある湾だった。4時間ほどここでガイドと太陽が出たらサイトフィッシングにトライし、雲で太陽が隠れるとブラインドフィッシングを続けた。が、結局当たりもなく、この日は終了した。

ホテルに帰ると、他の方は皆ワイキキにある焼肉屋に集合していると言う。今夜の夕食は焼肉HIROSHI。朝から晩までキャスティングを続けた肉体的疲れと、強烈な外人と二人っきりで過ごした精神的な疲れが重なり、異常に疲れていた。ビールと焼肉がものすごく旨い。最近は焼肉などに行っても軽く食べたら後は別の場所に移動して飲んだりしていたが、ここでは学生時代に戻ったような食欲で食べまくった。

ホテルに戻る道すがらCoco Coveに寄って葉巻を購入し、ベランダで葉巻を吸いながら軽く飲んでから寝ることにした。本当はハワイではベランダでも禁煙らしいのだが、ま少しくらいならとベランダでリラックスし、夜景を見ながらハワイアンラムを飲んだ。日中のゴルフの笑い話を聞いたり、私の釣りの話をしたりしているうちに眠くなってきたため、ベッドに入ることにした。

翌日もAM4:30に起床し、AM5:00にホテルのエントランスでピックアップを待ち、前日同様にガイドは遅刻した。

今日も前日同様、軍施設内のフラットに行くという。せっかく2日あるのだから、いろいろな所に連れて行ってもらいたかったのだが、ガイドも私にボーンフィッシュを釣らせたくて必死なのだろう。一番可能性のある場所に行くという姿勢が見えたので、私も何も言わずにガイドに任せることにした。

前日同様、早朝は深場でブラインドでトライした、日が高くなってきた頃ガイドが「今日の潮は最高だ。フラットに移動してサイトをやろう。今日は昨日より断然良いぞ」と言う。そうか、いよいよボーンフィッシュと対面できそうだなと考えていると、遠くの方からスピーカーでコチラに向かって何かを叫んでいる男がいるのに気がついた。最初は良く聞こえなかったので、ガイドに「なんだって?」と聞くとガイドが冷静な顔で「原子力潜水艦がパールハーバーに入港するから、俺たちはここから立ち退かなければならない」と言う。なんてこった・・・最高の時間に最高の場所にいるのに原子力潜水艦に邪魔されるなんて・・・。ここから別の場所に移動するには2時間はかかる。一番良い時間を車の中で過ごさなくてはならない。私は激しく落胆した。原子力潜水艦・・・。

まあ、原子力潜水艦に怒ってもしょうがない。別の場所に移動してトライを続ける事にした。前日の島の東側にある湾に移動し、ランチもとらずに一心不乱にキャストを続けた。強烈な照り返しの中、移動しながらキャストを繰り返していると、ガイドが私に向かって「おい。10時の方向30フィート先を見ろ。でかいのがいる。ゆっくり準備して9時の方向40フィートに投げろ。焦るな。リラックスして、ゆっくりだ。」と言う。私は、ガイドから学んだ全てのボーンフィッシングのノウハウを集結させ、落ち着けと心の中でつぶやきながらキャストした。

最高の場所にキャストすることができた。ガイドも「いいぞ」と言う。
「そこからゆっくりひけ。」
「ゆっくり。ゆっくり。」
「よし、そこで止めろ。止めたまま。止めたまま。」
私はガイドの言うとおりラインを操作した。

すると突然ガイドが「ヒット!」と叫んだ。

私はガイドから教わっていた、ボーンフィッシュがフライを口にした瞬間に行うべきライン操作「ジェダイ・ストリップ」を実践した。このライン操作は、ただ単に左手に持つフライラインを一直線に後方に引くというだけのものだが、ガイドはそれを「ジェダイ・ストリップ」と名付け「かかったら渾身の力を込めてジェダイ・ストリップだぞ」と私にたたき込んでいた。(もちろんこのジェダイはStar WarsのJediから来ている)

ところが、このジェダイ・ストリップを実行したにもかかわらず、何かが掛かった感触はまるでない。良くラインを見ると、潮に流されてフライと竿先の間が若干たわんでいる。このたわみが私のジェダイ・ストリップを吸収してしまい、フライまで力が伝達しなかったようだ。

これが最大にして最後のチャンスだった。残りの時間はひたすらブラインドキャストを繰り返し、私のガイドトリップは終わった。ガイドなしでは私はまだボーンフィッシュを見つけることができない。残り2日。ひたすらブラインドフィッシングをしなければならないが、この2日間で分かったのは、サイトフィッシングこそボーンフィッシングの醍醐味であり、闇雲にキャストを繰り返すブラインドフィッシングとは、緊張感や興奮度がまるで違うということだ。

帰り際ガイドに「残り二日、1人でボーンフィッシュねらえるワイキキから近いところは他にどっかないか?」と聞くと、なんとアラモアナショッピングセンターの前の海でも釣れるという。明日はそこに行ってみよう。

釣りを終えホテルに戻ると、みんな日本の居酒屋みたいなところで集まって飲んでいると言う。その居酒屋に行き、日本料理を食べ、その後クラブのような所に行ってビリヤードをして、前日同様ホテルで軽く葉巻パーティーをしてから寝た。

翌日は朝5時に起床し、前日ガイドに教わったアラモアナパークの前にあるらしいポイントに向かうことにした。ゴルフに行く他の方と時間が重なったので、一緒の車に乗せてもらい、途中で降ろしてもらっ
た。

有名(らしい)フィッシャーマンズワーフの前でおろしてもらい、海に向かうと、明らかに釣り人と思われる人々が大勢集まって釣りをしている場所がある。その中の1人に何を釣っているのか聞いてみると、アジを釣っているそうだ。しかもみんな餌釣りをしている。こんな餌釣り野郎どもがボッチャンボッチャンオモリを落としてる所であの繊細なボーンフィッシュがいるかどうか激しく疑わしいと思ったが、今日はここでやろうと決めていたので、釣りを始めた。

釣れる気配が全くない。ガイドにたたき込まれたキャスティングスキルの復習のつもりでキャスティングを繰り返して2時間ほどたった頃、突然腹が痛くなってきた。これはまずいと思い、釣りを中断し、どこかトイレがある場所はないかと歩き回ったあげく、スターバックスを見つけ、ロッドをたたまずにそこに急いで入った。

ここで事件は起った。ロッドをたたまずに無理矢理店内に入ろうとしたため、ロッドの先がスターバックスのドアに挟まれ、折れてしまったのだ。店内の客がドアを開いたままにしておくのを手伝ってくれたが、時既に遅し、私は衝撃のあまり腹痛も忘れ、しばらく呆然としてしまった。このロッドは生涯永久保証で、どんな原因でも折れたり壊れたりしたら無料で修理・交換してくれるというスゴイ保証が付いたロッドだったので良かったが、それでもアメリカに送って修理してもらい、それが戻ってくるまで最低2ヶ月はかかる。

もう一本ロッドがあるため、それで釣りを続けることもできたが、もうこの日はそんな気分ではなくなってしまっていた。ホテルに戻り、ホノルルにあるハワイ唯一のフライショップNervous Water Fly Fishersに行って、ショッピングをすることにした。 写真はNervous Water Fly Fishersに向かうために拾ったタクシーの運転手Antony。たまたま釣りが趣味で意気投合して、今度一緒に行こうと約束した。が、たぶん行けない。

Nervous Water Fly Fishersの店員Seanは、一番最初にハワイでのガイドを頼もうとした男だったが、今月は一杯だと言われて断られたため、例の怖い元軍人ガイドを雇ったという経緯があった。一度会って話をしてみようと思っていたが、会ってみると非常に感じの良い好青年だった。受け答えもしっかり出来るし、英語も非常に聞き取りやすい。会話の内容も真面目で、余計なことは一切言わない。スラングも一切使わない。私のガイド依頼を断ったことを申し訳なく感じてくれていたようだ。

ひとしきり店での買い物をして、オアフのボーンフィッシングスポットをいくつか教えてもらい、次にハワイに来たら是非ガイドをしてくれと頼み、店を後にした。

店を出たら、ホテルに戻って車でも借りてノースショアの方にドライブでも行ってみようかと考えていたが、突然例の腹痛が襲ってきた。あまりの激痛に立っていられないほどだ。タクシーを呼び急いでホテルに戻り、この日は一日中ホテルのベッドで唸っている羽目になってしまった。連日のディープウェーディングで腹が冷えたのだろう。こんな体験は初めてだった。

夕方になってゴルフから返ってきた方々も私の事を心配してくれたが、私はどうすることも出来ずにベッドで寝ていた。しかし晩飯を食べる頃になると若干症状も和らいできて、何か食べた方が体にも良いだろうと言うことで、現地に在住する方の知り合いの中国人お勧めの中華料理店Kirinに行って粥でも食おうという事になった。

ここの中華料理は最高に上手かった。中でも一番だったのがカニのブラックビーンズ炒め。私はこの30年間、アレルギーでカニが食べられなかったのだが、あまりに旨そうだったので口にしたところ、アラ不思議、なんのアレルギー症状も出ない。嬉しさと旨さでカニを食いまくった。カニって美味しいですね。

断続的に軽い腹痛は襲ってきたが、気にせずに食べて飲んだ。この中華料理店は値段も安く、喰いきれない程頼んで、ビールと老酒を飲みまくっても1人7000円程度だった。焼肉HIROSHIと同じくらいお勧めです。明日もあるので、ホテルに戻って早めに寝ることにした。翌日は午前中だけ釣りをして、午後はみんなで何かをして遊ぼうという話になっていた。

そして翌日、AM5:30に起床し、前日Nervous Water Fly FishersのSeanから教わっていたポイントに向かった。比較的ワイキキから近いのに、いかにもボーンフィッシュが生息していそうな広大なエリアが広がっていた。

魚が見えればサイトフィッシングも出来そうだったが、私にはまだ見えない。ひたすら移動しながらブラインドキャストを繰り返した。広大な浅瀬の中には私1人。ボーンフィッシュの陰を探してひたすら移動とキャストを繰り返す。この釣りが4日間の中で一番リラックスして楽しむ事が出来た。結局当たりもなく、ボーンフィッシュの陰すら見ることは出来なかったが、あまり悔いはない。ボーンフィッシングに必要な知識とスキルは身につけた。またボーンフィッシュを追ってハワイに来れば良いだけだ。11時にはホテルに返ることを約束していたので、4時間ほど釣りをして、ホテルに戻った。

ホテルに戻ると、みんなでハナウマ湾に行ってシュノーケリングをしようと言う話になっていた。車でハナウマ湾に向かい、シュノーケリングセットを借り、海に入った。この日は天候は良かったが、日光が雲に遮られがちで、尚かつ海の透明度も低かったので、遠くまで珊瑚と魚の群れが見渡せるような状態ではなかったが、それでも海は綺麗で、魚が珊瑚の周りを泳ぐのを眺めたりして楽しんでいた。どっかにボーンフィッシュいないかな、とも考えたが、フラットのゴーストがシュノーケリングしたくらいで見ることが出来たら逆にがっかりだ。一時間ほどシュノーケリングをして、その後浜辺でゴロゴロし、現地在住の方のお宅でバーベキューをする事になった。

私はここに来てお土産を全く買ってない事に気づいたので、途中アラモアナショッピングセンターで降ろしてもらい、急いでお土産を購入し、後から現地在住の方のお宅にタクシーで向かった。

私はまだ軽く腹痛を引きずっていたので、あまり食べられなかったが、先輩方と酒を飲み、談笑した。

深夜1:30発の飛行機の乗らなければならないため、現地在住の先輩に別れを告げ、空港へと向かった。空港に着いたのが比較的早かったので、空港にある本屋や免税店を物色していると、釣りの雑誌があった。パラパラめくっていると、今世界で一番ボーンフィッシングが熱い場所というページがあり、そこにはNo.1はバハマであると書いてあった。それを横で見ていた同行してた先輩が「次はバハマにいこーぜ」と言った。良いですけど・・・時間と金が・・・。この方は今回の旅でシャネルの70万もする時計を買っちゃったりしてる豪傑だ。バハマに行くなんてたいした事ではないのだろう。私も日本に帰ったら働きまくって、金を貯めるしかない。

帰りの飛行機ではほとんど寝ていたが、眠りに落ちる寸前の状態で今回の旅行を振り返った。ボーンフィッシュは釣れなかったし、腹痛にも襲われた。ある意味仕事よりきつい一週間だった。ただ、やりたいと思っていた事はやりきった。貴重な体験も沢山できた。仕事を完全に忘れて楽しんだ一週間だった。また時間を見つけて(バハマかどうかは分からないが)海外に足を広げてみたい。

ではまた。